銚子ジオパーク市民の会

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20220514
  ▲HP_Top    屏風ケ浦  外川エリア  愛宕山エリア  東海岸エリア  利根川河口  中央エリア  西部エリア 八木エリア
 屏風ヶ浦、犬岩、千騎ケ岩
国の名所天然記念物:屏風ケ浦、義経伝説の犬岩(奇跡の奇石)、千騎ケ岩
屏風ケ浦 
国の名勝および天然記念物


大谷津付近から刑部岬方向を望む
 
  屏風ケ浦は国の名勝および天然記念物 

歌川広重の六四余州名所図絵
「下総銚子の濱外浦」
船橋市立西図書館所蔵


①屏風ケ浦の大きな穴

 
②テラス近くの地層観察

 
③地震による崩落場所


④火山灰層に鳥が空けた穴

⑤防空壕跡


⑥名洗ガーネット層


⑦普段は行かない屏風ヶ浦の上部


⑧分厚い香取層(ハンモック)


⑨貝化石:香取層
    屏風ケ浦は江戸時代からの観光名所     

屏風ケ浦は:(下総台地の海食崖)
◇屏風ケ浦は銚子市犬若から旭市刑部岬まで続く、高さおよそ50m長さ10kmに渡って連続する海食崖です。江戸時代からの観光名所の一つで、赤松宗旦の利根川図志には「銚子磯浜めぐり」の終点として紹介されています。
◇屏風ヶ浦に沈む夕日も圧巻です。運が良ければ富士山を見ることができます。

屏風ケ浦は国の名勝及び天然記念物
◇左図は浮世絵師、歌川広重の六四余州名所図絵、「下総銚子の濱外浦」です。白く描かれた富士山(夕景とみられますが夕景とすると富士山は黒くシルエットになります)、右手に屏風ヶ浦の先端刑部岬が描かれています。大きな岩は千騎ケ岩と推測できます。
◇屏風ヶ浦の海は穏やかに千騎ケ岩側は荒々しく、砂浜には女性の観光客も描かれています。当時、磯めぐり観光が一般化していたことが分ります。

◇屏風ケ浦は平成28年3月、国の名勝及び天然記念物に指定されました。

多くの文人墨客が来銚子:利根川の水運
◇かつて、銚子には田山花袋や徳富蘆花など多くの文人墨客が訪れています。
利根川の水運は江戸との距離を縮め、香取神宮・鹿島神宮・息栖神社の三社詣、そして、更に利根川を下り「銚子磯浜めぐり」をするのが流行していました。
 

    屏風ケ浦の地層はざっくり3つ   

1、犬吠層群と呼ばれる約300万年前~40万年前の地層
◇犬吠層群は300万年前~40万年前の地層です。
その内、屏風ヶ浦で見ることができるのは300~100万年前の地層です。
◇概ね深い海で堆積した地層で北西方向に1~3°傾斜しています。
犬吠層群は下部から名洗層、春日層、小浜層、横根層、倉橋層、豊里層からなります。
遊歩道で観察できる地層(名洗層300万年前~200万年前)は火山砕屑物を多く含む砂岩(凝灰質砂岩)です。
2、約10万年前、浅い海で堆積した地層   
◇屏風ケ浦の赤っぽい地層は浅い海で堆積した砂の地層です。
 
3、陸化後の堆積物:関東ローム層    
◇屏風ケ浦の最上部、濃い茶色のひび割れのある地層が「関東ローム層」です。
関東ローム層は陸化した後、塵や火山灰が積もって粘土化したものです。
下総台地(屏風ケ浦の上の台地)は関東ローム層で覆われていて、多くはキャベツやダイコンの栽培に利用されています。
 
屏風ヶ浦入口付近の窪み 
◇写真①:遊歩道入り口に近いテラス前の大きな窪み(穴)です。現在は游歩道があり海水が崖に直接当たることはありませんが、以前は波による浸食を受けていました。窪みの両側には亀裂(断層)があります
この崖の平均堆積速度は
◇写真②:写真①近くの地層観察などが行われる場所です。上部でおよそ230万年前、下部で270万年前ごろの深い海で堆積した地層です。高さはおよそ20mですので、堆積速度は平均で1万年で50cmになります。
 
海食崖の出来方&浸食速度:保全は
◇崖は比較的柔らかく、波により窪みがつくられ、やがて上部が崩落して新しい崖面を見せます。落下した土砂は沿岸流により移動し、九十九里浜方面に供給されていると考えられています。侵食速度はかつて年間50cm~100cmと急激でしたが、現在はテトラポット、消波ブロック、遊歩道の設置によりかなり抑えられています。一説では10分の1になったと云われています。
◇遊歩道が完備している所では崖の傾斜も緩くなり、植物も目立ってきています。一方、
九十九里浜は痩せてきています。環境問題の難しさが垣間見えます。
東日本大震災及び余震による崩落 
◇写真③:左中央部の円く黒っぽく見える部分は昔のほら穴(海食洞)です。
上部には剥き出しの新しい地層が見えます。今は遊歩道があるため崩落した土砂は移動することなく下に留まっています。植物も多く生えています。
◇最近の地震による大きな崩落は2件
 2011/3/11 東北地方太平洋沖地震 銚子震度 5 強(遊歩道入り口からみて奥側)
 2012/3/14 銚子沖を震源とするM6.1、銚子震度5強(遊歩道入り口からみて手前)
 その他にも数百年に一度、超巨大津波が銚子を襲っています。

屏風ケ浦に見られる断層
◇屏風ヶ浦の地層を眺めていくと多くの断層を見ることができますが、多くは自重により生じた亀裂(重力断層)と云われています。 

 なぞの穴の正体は
◇写真⑤:4~5m上にある大きな穴は、太平洋戦争時の防空壕跡です。さて、入り口はどこでしょう?実は消波堤の建設されるまでの約20年間に侵食が進み、入り口部分が削られ、人が入ることができない穴になりました。
◇写真④:火山灰層には小さな穴があります。火山灰層は他の地層より軟らかいので、鳥もそこを狙って穴を作っています。 
 特別な火山灰(名洗ざくろ石火山灰層)
◇写真⑥:1月の誕生石ガーネット(ざくろ石)が多数含まれることから「名洗ガーネット層」と呼ばれます。火山灰の供給源は丹沢周辺の火山と考えられています。
◇この火山灰層は東京の江東区では地下1200m、鎌倉、相模原、銚子では地上で見ることができます。銚子は噴火口より遠く離れているので、ざくろ石の大きさは小さく顕微鏡観察になります。
◇この「丹沢-ざくろ石軽石層の年代は250万年前と特定されています。
 
普段は行かない屏風ケ浦の上部へ
写真⑦:専門家の指導を受けつつ、普段は行かない屏風ケ浦の上部へ向かう市民の会のメンバーです。写真は屏風ケ浦上部から名洗の集落や犬若岬を望んでいます。
写真⑧:この辺りの香取層はかなり厚い。写真⑨:貝化石等も確認できます。 黒いリング状のものがいくつもみられます。

⑩平成24年2月4日の屏風ケ浦
犬岩・千騎ケ岩 

絵図①銚子鳥瞰図の千騎ケ岩、犬岩の部分
吉田初太郎作


絵②:昭和10年代の犬若岬
石井 柏亭画 越川行雄氏所蔵


写真⑬:犬若岬の台地


写真⑭:伊能忠敬測量地点からの富士山


写真⑮:犬若岬の砂岩泥岩


写真⑯:浪の花


写真⑰:堆積時の流れを示す


写真⑱:級化層理


写真⑲:水抜けの構造


写真20:2億年の不整合
上の茶色の地層350万年前
下の灰色の地層は2億年前


写真㉑:2013/11 伊能忠敬銚子測量記念碑除幕式
屛風ヶ浦:銚子マリーナ海水浴場

        義経伝説の犬岩・千騎ケ岩        

 奇跡の奇石犬岩
◇写真⑩:犬岩は高さ15mの大きな岩です。お子さんは黒いので熊だという子もいます。
岩には多くの亀裂が走っています。大事な耳の付け根にも亀裂があります。耳がなくなったら 熊にも犬にも見えません。先の大震災ものりこえなので当分は大丈夫かも知れません。
◇犬岩は深い海(海溝)で誕生し、長い年月を経て移動し、浸食受け現在の犬の形をした岩体になりました。まさに奇跡の奇石です。
 義経伝説
◇義経は源氏平氏合戦で大きな功績を上げましたが兄頼朝に謀反人の疑いをかけられ追われる身になりました。伝説では義経主従は銚子三崎庄の片岡常春を頼って銚子に来ました。義経には若丸という愛犬がいました。いよいよ奥州平泉(藤原秀衡)を頼って落ちのびる際、平家の亡霊に狂った愛犬を船に乗せることはできず、ここに置いて行かざるを得なくなりました。
海岸に残された若丸は七日七晩泣きつづけ、八日目の朝、この大きな犬岩になったと伝わっています。
◇千騎ケ岩は義経の兵、千騎を隠したとされる岩です。銚子の犬吠埼は泣き声が聞こえたとから犬吠と名づけられたと伝わっています。銚子とその周辺には義経伝説に因む地名が多く残っています。(科学的根拠はありません)
 

写真⑪:犬岩遠くに富士山の姿も

写真⑫:陸続きとなった千騎ケ岩
石井 柏亭画に見る昭和10年代の犬若岬 
◇絵図②に描かれている倉あたりが平坦な台地になっています。この犬若岬の台地で、伊能忠敬は富士山の方位測量をしました。 絵には描かれていませんが左側に千騎ケ岩があります。右側には小さく犬岩が描かれています。右手前の海として描かれている部分は昭和40年代まで海水浴場でした。今は埋め立てられ陸地化しています。右側の赤茶色の崖は名洗の屏風ケ浦に連続する地層です。今は埋め立てによる陸化に伴い、傾斜が緩くなり草木が覆い昔の面影がなくなっています。
今は徒歩で犬岩のすぐ前まで行くことができます。
 
 犬若岬は「伊能忠敬富士山の方位測量の地」
◇伊能忠敬は第2次測量の1801年8月26日、当地を訪れ9日間滞在し、富士山の方位測量に成功しています。当時の測量方法においては正確な地図作りには高い山の方位測量が欠かせませんでした。銚子は富士山、筑波山、日光の山々を目視できる太平洋に突き出た東端の地です。
◇銚子からの富士山の方位測量はとても重要な意味を持っていました。伊能忠敬らは銚子での結果に自らの測量方法に自信を深めたと考えられます。
伊能忠敬の測量日誌に「慶介犬若岬に富士山を測る、その悦しるべし」と書いています
◇屏風ケ浦(マリーナ海水浴場)に銚子測量の記念碑が建っています。写真㉑
写真⑬:忠敬が富士山の方位測量した台地です。
写真⑭:運が良ければ洋上に富士山が見えます。
       犬岩・千騎ケ岩のでき方      
 
千葉県で一番古い岩体
◇犬岩や千騎ケ岩は中生代ジュラ紀のおよそ2億年前の地層(愛宕山層群)で千葉県で一番古い岩体です。海溝で海洋プレートが大陸のプレートの下に落ち込む際、剥ぎ取られた付加体です。付加体は陸からの土砂や海洋プレートからの海嶺のマグマでつくられた溶岩、海山、サンゴ起源の石灰岩、ケイ酸質骨格のプランクトン(放散虫)の遺骸からのチャートなどがごじゃまぜになってできます。
◇写真⑮:黒っぽいのが泥岩で白っぽい方が砂岩です。犬岩も千騎ケ岩もほぼ同様なでき方の岩です。犬岩や近くの岩体には多くの亀裂が見られます。

 海食洞と浪の花
◇写真⑯:波の花は日本海の冬の風物詩ですが犬若では冬に限りません。犬若岬の台地の下部には海食洞があり海に繋がっています。風向き等の条件が整えば穴から泡が吹き出ます。犬岩の前の海まで一面「浪の花」で覆われます。 
 
斜交層理  
 ◇写真⑰:堆積時の水の流れでできる堆積構造で堆積時の水の流れが分かります。
 
級化層理
 ◇写真⑱:堆積時、粒子の大きさの違いにより分けられているのがわかります。
各層は粒径の大きいものほど下に堆積しています。
 
水抜け構造
◇写真⑲:堆積時、水がぬけていく状況を示す堆積構造がが見られます。
 
 2億年の不整合 
◇写真⑳:下部の灰色ぽい岩は犬岩と同じ愛宕山層群(ジュラ紀)の砂岩泥岩でとても硬いです。その上の茶色の柔らかい地層は、屏風ヶ浦(300万年前)の地層です。2億年の年代差で接しています(不整合)。2億年の年代差を片手で触ることができます。
 
千騎ケ岩
◇標高約18m、周囲約400mの大きな岩体で、砂岩・泥岩からなり、犬岩などとおなじ千葉県最古の岩です(2億年前)。
◇千騎ケ岩の中腹に大きな穴が空いています。海水面が高かった時代の海食洞です。
陸とつながる前はウミウの越冬地として知られ、毎年500羽を越す群れの飛来が見られました。また、ムクドリの繁殖地としても知られます。県内では珍しいイソヒヨドリやハクセキレイの繁殖も確認されていましたが、今は陸と繋がったため状況は変わっています。
 
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